カテゴリー「相続税・贈与税」の記事

2011年11月25日 (金)

相続を放棄しても死亡保険金は受け取れるか?

 被相続人(亡くなられた方)に多額の借金があり、被相続人の財産よりも負債の方が多い場合には相続放棄を選択されるケースが出てくると思います。
 もし被相続人が個人で保険をかけていた場合、その死亡保険金も放棄しなければならないのでしょうか?
 契約者と被保険者が同一人の場合、死亡保険は相続財産ではなく、保険金受取人の固有の財産となります。例えば、契約者・被保険者が夫、死亡保険金受取人が妻の場合妻が受け取った死亡保険金は妻の固有の財産となります。つまり死亡した夫の財産ではなく、相続を放棄しても死亡保険金を受け取ることはできるのです。
 しかしながら、相続税の計算ではこの死亡保険金は「みなし相続財産」となるため、相続税の課税の対象となります。

 このケースだとどうなると思います?

 会社・・・借入金5千万円。借入金に対して個人保証をしている。会社での死亡保険契約なし。

 自宅・・・住宅ローン3千万円。団体生命保険に加入済み。住宅価値1千万円。

 個人での死亡保険金3千万円。保険契約者、被保険者は夫。受取人は妻。

① 相続放棄をしない場合
・自宅の住宅ローンが団体生命保険によりゼロとなり、住宅1千万円が夫の個人財産となります。
・会社の借入金5千万円に対して個人保証をしているので、借入金が5千万円となります。
・住宅1千万円と借入金5千万円が相続財産となります。
・死亡保険金は妻の固有の財産ですが、夫の財産を相続したため、家はあるけど負債5千万円を返済していかなければなりません。もし妻に収入が無ければ自宅と死亡保険金での返済となることになるかもしれません。

② 相続放棄をした場合
・夫の財産である自宅1千万円と会社の借入金5千万円を放棄したため、妻の固有の財産である死亡保険金は残ります。
・ですが、自宅は無くなってしまうので、別に住居を見つけなければなりません。

会社を経営されている方は絶対に会社で死亡保険金を加入するべきです。個人でかけている保険は残された家族のためのもの。法人でかける保険は相続時に残された家族に迷惑をかけないためのものなのです。

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藤谷英明税理士事務所

2011年7月 8日 (金)

孫への贈与を利用して相続対策をしましょう

 贈与税は基礎控除額が受贈者1名につき年110万円となっています。つまりこの金額以下の贈与ならば贈与税がかかりません。そこで、生前贈与を利用して相続対策をしましょう。

1. 相続開始前3年以内の贈与で相続財産に加算されない人とは?
 被相続人甲(死亡)、相続人(配偶者乙、長男丙、長女丁)とします。丙と丁にはそれぞれ未成年の子が1名(被相続人の孫)おり、丙の子をA,丁の子をBとします。
 遺言書では乙、丙及び丁にそれぞれ相続させる遺産の内容が書いていました。また、孫Bに対して特定遺贈する遺産の内容も書いていましたが、孫Aに対しての特定遺贈についての記載がありませんでした。

① 相続財産をもらっている乙、丙、丁及びBに対しては、相続開始前3年以内の贈与による受贈財産は、相続財産に加算されます

② Aは法定相続人でなく、この場合特定遺贈財産もないため、相続開始前3年以内の贈与による受贈財産は相続税の課税対象とはなりません。

※この生前贈与の3年しばりは、あくまでも相続や遺贈により財産を取得した人について適用されるものです。つまり相続開始により被相続人から相続や遺贈によって財産を取得していない人については、相続開始前3年以内の贈与であっても相続税の課税価格に加算されず、贈与税が課税されることになるのです。

2. 贈与は「あげた、もらった」の認識が必要です。
 贈与とはあげます、もらいましたという認識が必要です。よくあるケースとして、親が子名義の通帳を作り毎年100万円づつ振り込んでいたとします。その親が亡くなってしまい子供名義の預金が出てきた場合、たとえ名義が子供であってもこれは被相続人名義預金として相続財産に含まれてしまいます。この名義預金は要注意です。相続税の税務調査で必ずと言ってよいほど調べられ、修正申告のケースもかなり多いのが現状です。
 そこで、名義預金とならないようにするためには、定期預金とはせず普通預金として贈与し、いつでも引き出せるようにすることと、実際に利用されていることが重要です。また、受贈者も自分の通帳だという認識があることが必要です。

3.贈与の認識を持てる年齢とは?
 未成年者に対して贈与をする場合には注意が必要です。あまり小さい子供だと受贈に対しての認識はないものと判断されるかもしれません。未成年者は両親の扶養に入っているので、生活費や学費は必要ありませんよね。また、あまり大きい金額を与えたとしても教育上問題があるかもしれません。そのため、自由に使ってよいお金を与えても自分で考えて使うことができる年齢になってから贈与すべきではないでしょうか?
あまり小さい子だと贈与が否認されてしまい贈与はなかったものとされるかもしれません。

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藤谷英明税理士事務所

2011年4月 6日 (水)

大和ハウスオーナズクラブ様の雑誌に掲載されました

 平成23年2月5日に大和ハウス工業千葉支店にて、「これからの税制改正のポイント」という税務対策セミナーを行いました。それについて写真付きでダイワハウスオーナーズクラブ様の雑誌「アモ」に掲載されました。大和ハウス工業様ありがとうございます。

http://fujitani.la.coocan.jp/daiwahouse.html

2010年10月 7日 (木)

事業承継税制を利用して自社株の相続税を繰り延べましょう

 経営状況が良好な会社の悩みの一つに自社株式の高騰があげられるでしょう。毎年の利益の積み重ねが積もり積もってかなりの額となり、一株当たりの価額が高くなってしまうことがあります。これにより、贈与や相続の時に多額の税金を納めることになってしまいます。このため後継者の方が会社を引き継ぐにあたって多額の税負担が必要となり、事業承継に支障が発生していました。これを解消するために、非上場株式(自社株)を後継者の方が相続または贈与した場合に、一定の割合に対する相続税や贈与税を繰り延べる(免除ではありません。)ことができる税制があります。これを利用するためには注意点があるので、後述したいと思います。

1) 事業承継税制とは
 この制度は、中小企業の後継者が先代経営者からの贈与、相続または遺贈により取得した非上場株式(自社株式)に係る贈与税・相続税の一部を納税猶予する制度となっています。納税猶予される税額とは、発行済み株式(完全議決権株式)の3分の2に達するまでの部分で、後継者の方が既に持っている株式があればその3分の2に含みますが、その株式等に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税を、その後継者の死亡等の日まで猶予するものです。
例)1,200株発行済み・・・うち先代経営者1,000株保有、後継者200株保有
  先代経営者がお亡くなりになり、後継者の方が1,000株相続したとします。
  1,200株×3分の2=800株 → 800株-200株(後継者保有)=600株
  この600株に対する課税価格の80%を納税猶予します。
  残りの1,000株(相続)-600株(猶予対象)=400株に対する相続税は猶予の対象外です。
2) 事業承継税制を受けるにあたって
 事業承継税制を受けるためには贈与や相続の発生する前に「関東経済産業局長の確認」を取得していなければなりません。もし贈与や相続開始後に事業承継税制を適用したいと思っても、事前の確認を受けていなければ贈与税や相続税の納税猶予を受けられないので注意が必要です。
 ※この書類の作成及び提出は当事務所でできますので、担当者にご相談ください。

3) 関東経済産業局長の確認を受けた後、先代経営者の相続が発生した場合
 相続税の納税猶予制度を利用するために、「関東経済産業局長の認定」を取得する必要があります。この申請は相続開始から8か月以内に認定申請をする必要があります。
 その相続税の申告後5年間は継続して、事業継続要件に関する関東経済産業局長への年次報告等をする必要があります。

4) 納税猶予要件
 納税猶予要件とは、次の要件を指示します。そのため、その要件に該当しなくなった場合には、相続税を納付しなければなりません。しかも利子税付きで。
① 法定申告期限から5年間、経営承継相続人(後継者の方)が代表者であること。
② 法定申告期限から5年間、確認時の雇用の8割以上を維持していること。
③ 法定申告期限から5年間、相続後の相続株式を継続保有していること。

5) 免除される場合
 事業承継税制により納税猶予を受けた後継者の方が死亡した場合、会社が倒産した場合等は猶予税額が免除されます。

★実際に利用するかどうか分からない場合でも贈与や相続の発生する前に「関東経済産業局長の確認」を取得していなければならないので、事前に取得しておきましょう。

2010年4月 2日 (金)

生前に相続放棄ができるでしょうか?

 相続放棄とは、財産より借金の方が多い等の理由により、相続することをしない手続きを言います。この相続放棄は相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に、家庭裁判所に対して相続放棄のための申述書を提出する必要があります。

 では、この相続放棄は被相続人の生前にできるのでしょうか?

 結論としては生前での相続放棄はできないのです。

   生前での相続放棄の話がありそうなケース

父親(70歳)と子供A40歳)の家族で、既に母親が他界しているとします。この父親が再婚して後妻B40歳)がいる場合。子供Aからすると、このままでは法定相続分の2分の1が後妻Bに相続されてしまいます。そこで、父親に対して遺言を書いてもらうことにしました。この遺言では自分(子供A)に有利なものとなっていましたが、遺言書は新しいものが常に有効とされるため、後に自分の知らないところで遺言書を書きなおされる可能性を危惧していました。

そこで、生前に相続放棄を後妻Bにしてもらおうと考えたのでした・・・・・。

仮定の話ですが、あり得ないことではありません。この相続放棄を生前に子供Aと後妻Bとの間で書面で交わしていたとしても、法的な相続放棄の効果がありません。しかし、遺留分の放棄は生前にすることができます

   遺留分の放棄について

 遺言書での相続でも、遺留分を侵していれば遺留分減殺請求権(いりゅうぶんげんさいせいきゅうけん)を家庭裁判所に申し立てれば、遺留分についての相続が認められます。この遺留分については生前に放棄することができるのです。

 ただし、認められるためには次の条件が必要です。

ア)    放棄が本人の自由意思にもとづくものであるかどうか

イ)    放棄の理由に合理性と必要性があるかどうか

ウ)    代償性があるかどうか(たとえば放棄と引きかえに現金をもらうなど)

 家庭裁判所では、上記の許可基準を設けて遺留分権者に対して面接を行います。そこで、この放棄が強制されたものでないことや、放棄をすることの不利益点等を確認します。

  この遺留分の放棄はかなりハードルが高いことがお分かりでしょうか?例えば、相続人である長男が親の面倒をずっと見てきて、それ以外の子供には生前贈与で、ある程度の資産を贈与している場合等は、相続人間でも納得できるのではないでしょうか。それに対して、相続人間の関係が悪い場合等は難しいのではないかと思われます。

 また、遺留分の放棄だけでは相続のときに法定相続となってしまうため、遺言書とセットにしなければなりません。つまり、遺言書での相続では遺留分を侵してしまうため、その遺留分を生前に放棄させることにより、遺言書通りの相続ができるのです。

   相続を争族としないために

 子供Aと後妻Bとの間では、父親が亡くなった時点で相続争いが行われることが火を見るより明らかではないでしょうか。もし子供Aが相続を上手くすすめようと考えるならば、全て相続しようとは考えず、相当程度の財産を生前に贈与させ、遺留分の放棄をお願いしましょう。そのあと、被相続人である父親に遺言書を書いてもらうのです。父親も後妻のことが心配でしょうから、生前に対策をとれて納得するのではないでしょうか。 

2010年3月 7日 (日)

個人年金保険の評価額の優遇が廃止されそうです。

 相続対策で個人年金保険に加入された方には、非常に困ったことになりそうです。それは今国会で次の税制改正が成立する見通しだからです。

 相続税および贈与税において、年金の受給権の評価が次のように変わります。

 【現行】

  受取期間で評価が変わります。

  5年以下・・・・・・・・・・・・・・・・70%  5年超10年以下・・・・・・・・・・60%

  10年超15年以下・・・・・・・・・50%  15年超25年以下・・・・・・・・・40%

  25年超35年以下・・・・・・・・・30%  35年超・・・・・・・・・・・・・・・・・20%

  ※例えば毎月10万円を30年間受け取る契約ならば、受給総額は3,600万円で、相続税の評価額は30%なので1,080万円となり、かなりの評価減となっていました。

 【改正案】

  相続・贈与時点での時価となります。

  ※時価なので、一時金でもらった金額となります。つまり、受給総額が3,600万円ならば評価額は3,600万円なのです。

 この改正案は3月中にも成立しそうなのですが、この場合既存の契約でも来年4月以降の相続や贈与が発生した場合には、現行の評価減が受けられず、時価評価となります。

 ①対象となる保険

  定額年金保険・変額年金保険・死亡保険を年金で受け取る収入保障保険など

 ②対策

  現在年金保険を加入されている方で、平成23年3月までに年金受給権が発生していない場合、そのまま持ち続けるしかないようです。なぜならば、年金保険の途中解約は手数料がかかったり、変額年金は現在では解約すると損が発生するケースが多いとのこと。

 そのため、事前の年金特約を外すことで、雑所得の税負担が軽い方式が適用されることとなるため、生保業界では今後契約者に通知をするのではないかと思います。

 ③年金保険のかけこみ加入は要注意!

 現在生保会社では駆け込みで年金保険を販売しているようですが、これには注意が必要です。この場合に多くみられる契約形態が、次の通りです。

 A)平成22年3月までに年金保険に加入して、数カ月から1年で年金受給権が始まるようにします。

 B)契約者を親(推定被相続人)、受取人を子(推定相続人)とします。

 C)この受給権が確定した年金を生前贈与することにより、来年3月までの相続・贈与に該当するため現行の評価減を受けることができるのです。

 D)受給権3,600万円(毎月10万円×30年)を贈与した場合、評価額が1,080万円となり、これの贈与税額が263万円となります。もしこの1,080万円を相続時精算課税制度を利用して贈与すれば、贈与税が0円で贈与ができるのです。

 上記の問題点は、まず贈与税が高いこと。相続税のような基礎控除額が高くなく、年110万円までしかないこと。しかも税率が高いため、かなりの負担となってしまいます。

 相続時精算課税制度を利用すると、2,500万円まで贈与税がかかりませんが、相続のときに加算されます。しかもその後は年110万円の贈与税の基礎控除額が利用できません。

 ④結論

 もし駆け込みで加入される場合、リスクもあることを理解したうえで加入してください。

 私は現在お客様には年金保険を勧めていません。法改正が確定ではなく不確定要素があるためでもあり、相続時精算課税制度を利用することは、通常の贈与を利用した相続対策の道を自ら閉ざしてしまうからでもあるからなのです。

 (日本経済新聞平成22年3月7日版を参考とさせていただきました)

2009年8月10日 (月)

非上場株式等の相続税の納税猶予制度

 後継者が、先代経営者から自社株式を相続した場合、下記の要件のすべてを満たしていれば、後継者がその相続した株式等(既に保有している株式と合わせて議決権株式総数の3分の2に達するまでの部分)の80%に対応する相続税が納税猶予されます。

 要件1)中小企業者であること

 要件2)相続開始の日(先代の方が亡くなった日)前経済産業大臣の確認を受けていること。

 要件3)相続開始の日から8カ月以内に経済産業局長に認定申請していること

      その認定後税務署長に事業承継税制の申請ををしていること

 先代経営者の要件)

  ・会社の代表者であった(ある)こと

  ・先代経営者と同族関係者で発行済議決権株式総数の50%超の株式を保有し、かつ同族内で筆頭株主であったこと

 後継者の要件)

   ・会社の代表者であること

   ・先代経営者の親族であること

   ・後継者と同族関係者で発行済議決権株式総数の50%超の株式を保有し、かつ同族内で筆頭株主であること

 5年間の継続要件)

   ・会社の代表者であること

   ・雇用の8割以上を維持していること

   ・相続した対象株式の継続保有をしていること

   ・資産管理会社に該当しないこと

   ・報告基準日(申告期限から1年を経過するごとの日)の翌日から3月以内に経済産業局に事業継続の状況等についての報告書を提出しなければなりません。

 皆さんどうですか。上記の手続きを踏まえないとできないので、かなり大変だと思います。そのため、実際に行う場合には相当の準備が必要であると思いますので、ご注意ください。

2009年8月 4日 (火)

経営承継法により事業承継の支援策が講じられています

 相続のときに困ることは自社株式の相続についてではないでしょうか。非上場企業の場合、後継者の方が会社の株式を相続されますが、その会社が良好な企業の場合、自社株の価額がかなりの金額となっており、相続税の負担で苦しめられることになります。

 同族企業の場合、株式を売却するといったことはしないので、会社を継続するために相続税の納付資金を工面しなければならず、後継者の方は苦労されていたのが現状でした。

 しかしながら、経営承継法という法律により、次の3つの支援策が講じられることになりました。

 ①民法の特例(遺留分に関する特例)

 ②金融支援

 ③相続税の課税についての措置(非上場株式等に係る相続税および贈与税の納税猶予制度の創設。)

 今回は①の民法の特例についてお知らせします。

 【民法の特例(遺留分に関する特例)】

 経営者の方は、後継者の方に自社の株式を生前に贈与していき、相続税の負担を少なくしていこうと考えられています。確かに、生前に贈与していけば、相続時に後継者の方が相続する自社株式が少なく済むため、節税対策にはなります。

 しかしながら、後継者の方に兄弟がいたら(被相続人の子供が複数人いたら)どうなるでしょうか?

 民法の規定では、遺留分の中に過去に贈与した株式も含まれているのです。(生前贈与財産の持ち戻しといいます。)そのため、相続財産のほかに生前贈与財産もこの遺留分の中に含まれてしまうため、結果として他の相続人の遺留分を侵しているときは、この相続人の訴えにより遺留分を侵している部分を取り戻すことができるのです。(遺留分減殺請求権)

 ここで問題となるのは、一般的には、円滑に事業を承継させるために後継者の方へ事業用資産と自社株式を相続させることとなります。この総額が遺留分を侵す可能性があり、事業を承継しない他の相続人により遺留分の減殺請求が行われると、事業承継が難しくなってしまうのです。

 そこで、一定の要件を満たす後継者が、遺留分権利者全員との合意及び所要の手続き(経済産業大臣の確認、家庭裁判所の許可)を経ることを前提に、次の民法の特例の適用を受けることができるのです。

①生前贈与株式を遺留分の対象から除外する

 これにより、相続に伴う株式分散を未然に防止できます。

②生前贈与株式の評価額を予め固定する

 後継者の貢献分による株式価値上昇分が対象外となるため、経営意欲が阻害されません。

 ただし、この特例も問題がないわけではありません。前述のとおり、遺留分権利者全員の合意が必要なため、反対者が一人でもいると適用することができないのです。そのため、この規定を適用するためには、被相続人(先代の社長さん)が生前に中心となって取り決めをする必要があると思います。

2009年5月30日 (土)

贈与税の基礎知識

相続税対策を考えた場合、生前贈与をいかに早期から実施していくかが重要なテーマとなってきます。ただし、間違った贈与をしてしまうと日本で一番高い税金である贈与税の課税対象となってしまう危険性があります。今回は贈与税について考えてみましょう。

1)受贈者(贈与を受けた者)に課税されます。

 財産をただでもらっているため、不労所得として課税対象となるのは相続税と同じ理由からです。

2)暦年(1月1日から12月31日)単位で課税されます。

 1年間に受けた贈与金額を合計したものに対して、翌年の3月15日までに贈与税の申告をします。

3)基礎控除額は、年間一人110万円です。

 この基礎控除額は、贈与者ではなく受贈者一人につき110万円の範囲で贈与税がかからないようにするための控除額です。そのため、配偶者と子供2人に贈与する場合、贈与者から見れば330万円(一人につき110万円ずつ)の資産を無税で贈与することができます。

4)贈与税の計算方法

 課税価格(年間受贈財産合計)-基礎控除額110万円=基礎控除後の課税価格

   基礎控除後の課税価格 × 税率 = 贈与税額

基礎控除額後の課税価格

税率

控除額

実行税率

200万円以下

10%

       10%

200万円超 ~ 300万円以下

15%

10万円

10  ~11.7%

300万円超 ~ 400万円以下

20%

25万円

11.7~13.8%

400万円超 ~ 600万円以下

30%

65万円

13.8~19.2%

600万円超 ~1000万円以下

40%

125万円

19.2~27.5%

1000万円超~

50%

225万円

27.5~    %

5)贈与税の配偶者控除(2,000万円)とは?

 婚姻期間が20年以上の配偶者に対して、居住用不動産かその取得(増築含む)のための金銭を贈与した時は、基礎控除額プラス2,000万円の配偶者控除額が利用できます。つまり、2,110万円までは無税で贈与することができます。ただし、この制度を利用できる贈与は同一の配偶者からは一生に一度しか受けることができません。

6)贈与の否認を受けないために。

    贈与者の預金口座から贈与分を引き出し、受贈者の預金口座に振り込む。

 現金でのやり取りは贈与事実の証明が残らないため、ほとんど証明力をもっていません。

    受贈者の預金は、できる限り相続時まで引き出さない。

 もし引き出すのであれば、何に使ったのかをメモしておく。

    通帳を受贈者自身が保管し、届出印も贈与者のものと別にして本人が保管する。

 税務上では、預金の名義人=その預金の所有者とはなりません。そのため、預金の名義人が受贈者だからと安心して贈与しても実際に保管している者が贈与者ならば、贈与したとは認められません。

    111万円の贈与で贈与税の申告をしていく方法。

 毎年111万円ずつ贈与し、1,000円の贈与税を納めていくことにより、贈与の証明を得る方法ですが、申告をしたとしても上記①から③をしていないと意味がありません。

    連年贈与にご注意を!

 毎年100万円ずつ贈与を10年間した場合、1,000万円贈与をしたのと変わらないとみなされて、1,000万円に対しての贈与税が課税される可能性があります。毎年金額を変えましょう。

2009年4月28日 (火)

住宅取得のための贈与税が軽減されるそうです。

 平成21年4月27日に「租税特別措置法の一部を改正する法律案」が閣議決定され、国会へ提出されました。その中の一つに、住宅取得のための時限的な贈与税の軽減措置が盛り込まれています。

 平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に、直系尊属から居住用家屋の取得等に充てるために金銭の贈与を受けた場合には、当該期間を通じて500万円まで贈与税が課されないこととなるそうです。この特例は、暦年課税(110万円の基礎控除額)又は相続時精算課税(2,500万円)とのダブル適用が可能です。

 課税されない金額

①暦年課税と合わせると610万円

②相続時精算課税制度と合わせると3,000万円

 ①又は②のどちらかの選択適用となります。②の相続時精算課税制度を適用した場合、暦年課税の110万円控除の適用を受けることができなくなるので、注意が必要です。

 そのため、相続財産が多い方は①を利用したほうが、相続時に相続税の負担額が少なくなる可能性があるので、選択する際には十分に検討してください。

 住宅の取得等の意義 

 また、今回の贈与資金は住宅の取得等とありますが、この場合の取得等には次のものが含まれます。

①住宅用家屋の新築、建売住宅の取得又はその土地

②中古住宅の取得又はその土地

③贈与を受けた者の住宅用の家屋について行う増改築等(100万円以上であること)

 その他注意点

 住宅取得資金の取得をした日の属する年の翌年3月15日までに当該住宅取得等資金の全額を住宅の取得等に充て、同日までに居住の用に供しなければなりません。