カテゴリー「消費税」の記事

2010年6月 4日 (金)

自動販売機を利用した消費税還付手法の終焉

 今回のテーマを聞いて、皆さん何を言っているのだろうと不思議に思われたことかと思います。これはアパートを建築した際に、払った消費税を還付してもらうために行われていた手法です。

① 消費税の考え方
 課税売上に係る消費税額からその課税売上に応じて仕入れたものに係る消費税を控除して、差額を納付若しくは還付します。例えば、課税売上割合が95%以上ならば課税仕入等に係る消費税の全額を控除できます。これに対して、非課税売上を稼ぐための建物等を建築して消費税分を払っていたとしても控除することはできません。

② アパート収入
 アパート収入は消費税が非課税です。つまり消費税をもらっていないわけです。そのため、アパート収入だけだと課税売上割合は0%で、アパート建築にかかった消費税の還付を全く受けられないのです。そこで自動販売機をアパート建築予定地に先に設置して消費税の還付を受けようとする手法が考えられたのです。

③ 自動販売機を使った消費税の還付方法
 アパートを建築する前に、敷地に自動販売機を設置します。自動販売機収入は課税売上なので、課税事業者選択届出書を提出すると、最初の年から課税事業者となります。アパートの建築及び入居を12月近くに設定します。そうすれば、課税売上割合が95%以上となる可能性が高く、アパート建築に要した消費税の全額を仕入控除とすることができます。また課税売上割合が95%未満でも一括比例配分方式を選択すれば、課税売上割合に応じた消費税の仕入控除となります。そのため課税売上に係る消費税額よりも仕入控除額の方が多いので、差額を還付として受けることができるのです。
 その年を含めて2年間は課税事業者となりますが、3年目の前に課税事業者選択不適用届出書を提出します。3年目の基準期間は2年前となるので、基準期間の自動販売機の売上が1,000万円以下ならば免税事業者となります。これにより、還付金を受けたままとなるのです。

④ 改正点
 平成22年4月1日以後に課税事業者選択届出書を提出した場合、3年間は事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用が受けられなくなりました
 これにより、③の説明で3年目は免税事業者とすることができずに、課税事業者となります。その際、課税売上割合が極端に変動することになります。なぜならば、アパート収入は非課税売上なので、自動販売機収入の課税売上と合わせた合計に占める非課税売上の割合が高くなります。
 この課税売上割合が著しく変動した場合には、調整しなければなりませんこの調整により、還付を受けた消費税のほとんどを納付しなければならなくなったのです。誤解が無いようにご説明しますが、消費税の還付を受けることはできます。しかしながら、3年後にはそのほとんどを納付しなければならないので、利用するメリットが無くなったということになります。
 このことから、アパートを建築した際に自動販売機を用いた消費税の還付手法が事実上終焉を迎えたのでした。

2009年5月 5日 (火)

中小企業のリース取引の処理について(再考)

 平成20年4月1日以後のリース契約からリース取引についての処理が変更となり、当初所有権移転外ファイナンスリースについては資産計上すべきではないかと問題になりましたが、国税庁の回答により、中小企業の場合で今までどおり賃貸借処理をして毎月の経費として処理しても差し支えないとのこととなりました。つまり、リース取引は中小企業においては今までどおりで問題ないとのことです。

所有権移転外ファイナンスリースとは

 リース取引にはファイナンスリースとオペレーティングリースがあります。

  •  ファイナンスリース・・・・・・・・解約不能・借手がリース資産からもたらされる経済的利益を享受し、かつ、リース資産の使用コストも負担する(一般的なリース)
  •  オペレーティングリース・・・・ファイナンスリース以外(いわゆるレンタル)

 ファイナンスリースのうち所有権が借り手側に移動するものが所有権移転ファイナンスリースといわれ、どちらかというと割賦販売に近いイメージです。そのため、一般的なリースは所有権がリース期間中はリース会社が有しているため、所有権移転外ファイナンスリースとなるのです。

原則は資産計上なんだけど

 所有権移転外ファイナンスリース取引は原則的には資産計上しなければならないものですが、中小企業の場合計上しなくてもよいこととされ、問題ないはずだったのですが、リース会計と法人税法と消費税法との取り扱いが異なっていたため、現場ではかなり混乱を招いていました。リース会社の方は「中小企業だから資産計上する必要がないですよ。」という回答が多く、お客さんから実際はどうなのか?という問い合わせがかなり多かったです。

 これは、リース会計基準では確かに中小企業は資産計上しなくてもよいので、リース会社の方はこの点を強調するのですが、実は消費税法ではリース契約時にリース料総額の課税仕入を計上しなければならないとのこととなっていたのです。

 通常リース期間が5年の場合、期首に契約すると12か月分の賃借料に対する消費税を課税仕入とするのですが、上記によれば、契約時に60か月分を一度に課税仕入として計上しなければならないのです。つまり、買取と同じ処理をしなければならなかったのです。

 このため、会計処理として契約時にリース料総額の課税仕入を計上し、その後に支払うリース料については不課税仕入(消費税を掛けない)にするといった処理をすることによる間違いリスクを考慮しなければならなかったのです。

 また、法人税法では原則としてリース資産として資産計上し、リース定額法(残存価額ゼロ)により償却していくということになりましたが、リース期間がリース資産耐用年数に比べて著しく低くない限り、定額法で残存価額ゼロということは毎月の償却費の金額が賃借料とほとんど変わらないので、特に今までと同じ処理でも問題ないです。ただし、決算書注記にはリース料の未払い分を計上しなければならないようです。

結果として中小企業は今までどおりでよいこととなりました

 やはり上記の状況ではまずいということになったのでしょうが、中小企業については所有権移転外ファイナンスリース取引を賃貸借処理をしている場合で、支払うべき日の属する課税期間の課税仕入として消費税の申告をしても差し支えないとのことです。つまり、今までと同じ処理で構わないとのことです。

 今回の改正は会計と税務とのすりあわせが上手くいかなかった見本という感じでしょうか。税務でも法人税と消費税との取り扱いが違っているので、現場としては本当に困った改正でした。