自動販売機を利用した消費税還付手法の終焉
今回のテーマを聞いて、皆さん何を言っているのだろうと不思議に思われたことかと思います。これはアパートを建築した際に、払った消費税を還付してもらうために行われていた手法です。
① 消費税の考え方
課税売上に係る消費税額からその課税売上に応じて仕入れたものに係る消費税を控除して、差額を納付若しくは還付します。例えば、課税売上割合が95%以上ならば課税仕入等に係る消費税の全額を控除できます。これに対して、非課税売上を稼ぐための建物等を建築して消費税分を払っていたとしても控除することはできません。
② アパート収入
アパート収入は消費税が非課税です。つまり消費税をもらっていないわけです。そのため、アパート収入だけだと課税売上割合は0%で、アパート建築にかかった消費税の還付を全く受けられないのです。そこで自動販売機をアパート建築予定地に先に設置して消費税の還付を受けようとする手法が考えられたのです。
③ 自動販売機を使った消費税の還付方法
アパートを建築する前に、敷地に自動販売機を設置します。自動販売機収入は課税売上なので、課税事業者選択届出書を提出すると、最初の年から課税事業者となります。アパートの建築及び入居を12月近くに設定します。そうすれば、課税売上割合が95%以上となる可能性が高く、アパート建築に要した消費税の全額を仕入控除とすることができます。また課税売上割合が95%未満でも一括比例配分方式を選択すれば、課税売上割合に応じた消費税の仕入控除となります。そのため課税売上に係る消費税額よりも仕入控除額の方が多いので、差額を還付として受けることができるのです。
その年を含めて2年間は課税事業者となりますが、3年目の前に課税事業者選択不適用届出書を提出します。3年目の基準期間は2年前となるので、基準期間の自動販売機の売上が1,000万円以下ならば免税事業者となります。これにより、還付金を受けたままとなるのです。
④ 改正点
平成22年4月1日以後に課税事業者選択届出書を提出した場合、3年間は事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用が受けられなくなりました。
これにより、③の説明で3年目は免税事業者とすることができずに、課税事業者となります。その際、課税売上割合が極端に変動することになります。なぜならば、アパート収入は非課税売上なので、自動販売機収入の課税売上と合わせた合計に占める非課税売上の割合が高くなります。
この課税売上割合が著しく変動した場合には、調整しなければなりません。この調整により、還付を受けた消費税のほとんどを納付しなければならなくなったのです。誤解が無いようにご説明しますが、消費税の還付を受けることはできます。しかしながら、3年後にはそのほとんどを納付しなければならないので、利用するメリットが無くなったということになります。
このことから、アパートを建築した際に自動販売機を用いた消費税の還付手法が事実上終焉を迎えたのでした。