カテゴリー「金融」の記事

2014年3月28日 (金)

経営者保証に関するガイドラインが2月1日より適用されています

 中小企業が銀行から融資を受ける場合、保証協会の保証以外にも経営者の個人保証が必要となっています。そのため、会社が倒産した場合にはその責任が個人の財産にもおよび、結果として自己破産にまで及んでしまうのが現状です。自己破産された方は復権した後でも借入等を受けられず、約5年から7年間は個人の信用情報がブラックリストとなっており、事業の再建は実質上不可となっていました。

 この状況を変え、復活をやりやすくするための制度として「経営者保証に関するガイドライン」が平成26年2月1日より適用されることとなりました。ではこのガイドラインとはいったいどういうものなのでしょうか?

 【経営者の個人保証について】

法人と個人が明確に分離されている場合などに、経営者の保証を求めないこと

②多額の個人保証を行っていても、早期に事業再生や廃業を決断した際に一定の生活費等(従来の自由財産99万円に加え、年齢等に応じて100万円~360万円)を残すことや、「華美でない」自宅に住み続けられることなどを検討すること

③保証債務の履行時に返済しきれない債務残額は原則として免除すること等

 上記が主なものであり、大変画期的なものですが注意点が必要です。

 【注意点】

 法人と個人が明確に分離されているという条件を満たすためには下記の企業は不可であると思われます。

・役員の方が会社からお金を借りている場合等の役員貸付金がある企業。

・どんぶり勘定の企業。年に一度の決算しか資料が出ない企業。

・会社と個人の財布が一緒の企業。

 同族会社の場合、上記は一般的によくあり得る事象ですが、そのような企業に対しては法人と個人が明確に分離されているといえないので、残念ながら個人保証での融資しか受けられません。

 【適用を受けるためには】

・法人と個人のお金を明確に分離する。つまり法人と経営者の間の資金のやり取りを明確にし、役員貸付金があれば役員の方は会社に返済をすることが必要です。

・「中小企業の会計に関する基本要領」を決算書に添付できる企業にする。そのためには適時に正確に会計帳簿をつけている必要があります。年に一回ダンボールで会計事務所に資料を持って行って決算をする企業ではこの中小企業会計要領をつけられないので、毎月の月次決算ができる体制を構築しなければなりません。

 画期的なガイドラインができましたが、あくまでもガイドラインであり、過度の期待は禁物です。借入を経営者保証なしの融資を申し込んだとしても銀行では厳しくみられます。この制度ができたからと言って、誰でもが個人保証なしの融資は受けられません。第三者から見てきちんとした会社にしかこのガイドラインは適用できないものと思ったほうがいいのではないでしょうか。

 金融情勢は現在経営者以外の第三者保証はとらない方向ですし、昨年度から国の方向性として、しっかりとした経営をされている企業は助けますが、どんぶり勘定や数値に弱い経営者に対しては退場してもらうという流れになってきているので、その退場予備軍にならないためにも、毎月月次決算・中小企業会計要領の添付・税理士法第33条の2書面添付がつけられる税理士事務所との顧問契約を締結していった方が、企業の存続発展のために非常に有用であるものと思います。

2013年11月 2日 (土)

三菱東京UFJ銀行のTKCローン「極め」

 経営革新等支援機関であるTKC会員事務所(当事務所も認定支援機関です。)の関与先企業に対して、三菱東京UFJ銀行から「極め」というローン商品が提供されました。

1.申し込み条件

①TKC継続MASシステムを利用した中期経営計画を作成していること。

②記帳適時性証明書の直近期「◎」が6個以上・・・毎月巡回監査をしていることの証明。

③FX2等による自計化がされていること。

④経営革新等支援機関に認定されたTKC会員との顧問契約が1年以上であること。

⑤業歴1年以上で、保証協会が利用できる中小企業であること。

⑥債務超過でないこと。

⑦申込時点において税金及び社会保険料の未納がないこと。

2.適用基準金利

  特別金利 固定金利年率1.3% + 保証協会の保証料

3.金利優遇

①TKC全国会による「書面添付」をつけている。 年率▲0.3%

②「中小会計要領」に則っていることの表明。   年率▲0.3%

③「記帳適時性証明書」の「◎」が30個以上。   年率▲0.3%

 ※最大優遇時、年率▲0.9%

4.さらに3つの金利優遇条件を満たす場合 

 「T’sコミット300」(プロパー融資)へのお申し込みが可能です。

5.手続き

 手続きはTKC会計事務所経由で行われます。そのため、当事務所のお客様は積極的にご提案していきたいと思っております。

2013年9月11日 (水)

日本政策金融公庫から融資を受ける場合の留意点

 税金の滞納がある方は融資を受けることができませんが、その税金の払い方で融資ができなくなります。信用保証協会を利用した銀行からの借り入れやプロパー融資を申し込んだ場合、税金の完納証明等の取得を求められます。これは税金の滞納があるかどうかを確認するものであります。

 なぜ税金の滞納があれば融資ができないかについてですが、税金が期日までに払えない企業の状況という考えもありますが、企業が倒産等をした場合、期日が到来している税金が先に差し押さえ可能となってしまうからです。滞納があることを知っていながら融資をした方が問題があるとの認識となり、結果として保証協会や銀行は融資ができないのです。

 ただし、金融機関の場合には完納証明書があれば融資可能(経営状況等によりますが)となりますが、日本政策金融公庫の場合、税金の納付書の提出も求められます。つまりどういうことかというと、融資申し込み時点で税金を完納していて滞納税額がなくても、その直前に一括で納付していたり、期限後納付をしていたりすると日本政策金融公庫では融資不可になる可能性が高いのです。納付の仕方を重視しているのです。

 資金繰りが悪くても税金の滞納だけはご法度です。銀行からの融資に対して返済しても滞納税金があれば融資は絶対受けられません。ちゃんと返済していれば税金の納付を後回しにしても銀行から借り入れができるだろうという判断は危険です。税金の滞納をするくらいならば、銀行へ条件変更(リスケ)を申し込んだ方が絶対得策です。

2012年7月28日 (土)

借入金の借り換えによるまとめ方

銀行からの融資が多くなって毎月の返済額が多額となり、資金繰りを圧迫している場合の対策として借り換えがあります。しかしながら、何でも借り換えができるというわけではありません。借り換えをする上での注意点は次の通りとなります。

1.借り換えをするメリット
借り入れ本数が多くなると毎月の返済額が多額となり、返済のために借り入れをするといった自転車操業に陥ってしまいます。借入金の内容をよーく吟味してみると、返済期間があと1年しかないものもあれば、借り入れをしたばかりで5年もあるといったように混在しています。しかしながら、両方とも毎月の返済額は当初借り入れをした時と変わらないはずです。もしこれを借り換えで1本にまとめることができれば、借り入れ金額が変わらなくても毎月の返済額をかなり減らすことができるのです。

2.保証協会付融資と担保融資、無担保融資とに分ける。
 担保融資の場合、担保価値が借入金額以上となっているかどうかが重要です。担保割れしていれば追加担保を求められるかもしれません。
 無担保融資(プロパー)の場合、新規のプロパー融資は難しいと考えましょう。金利が高いビジネスローンを借り入れている場合は、他の融資に変える方法を考えなければなりません。
 保証協会付融資の場合、次のように分類します。

3.100%保証、80%保証、市や県の制度融資に分けます。
 平成19年10月以降の保証協会付融資は80%保証となっています。これは責任共有制度と言って銀行も貸倒の場合には20%の損失負担をしなければならないものです。但し、セーフティネット保証融資等は100%保証となっており、80%保証と100%保証とは一緒にまとめることができません。
 また市や県の制度融資も保証協会の保証がつけられています。これも上記とまとめることはできません。

4.複数銀行で保証協会付融資を借り入れている場合
 融資を複数の銀行から借り入れている場合も借り入れの本数をまとめるのが難しくなります。例えば同じ銀行から2本の借入金がある場合、上記2と3を元に分類して同じならば1本にまとめることができます。しかしながら2つの銀行から別々に借り入れている場合、例えばA銀行へ返済した上でB銀行から借入金を借り換えることになります。これは資金繰りが悪い企業にとっては困難と言えるでしょう。
 A銀行へ返済をしなくても「B銀行で借り換えをしたいのでA銀行の保証協会付融資をB銀行へ移したいので同意してください」と言った同意書をA銀行からもらえれば可能ですが、A銀行とは喧嘩別れを覚悟しなければならないので、現実的とは言えないのです。

5.思ったほど借り換えによる借入金の本数を減らせない場合
 上記により、保証割合が違ったり、借入先が違っていることが壁となって借り換えができない事があります。そのため日頃から取引銀行の数を少なく(3行程度が望ましいです。)する必要があります。 

 借り換えについては銀行員から積極的に話があるわけではありません。もし借り換えをしたいのであれば、借入側からのアプローチが必要です。その際の注意点として、「返済額を減らしたい」といった話を持ちかけると、能力に疑問がある銀行員だと条件変更(リスケジュール)ととらえてしまうこともある(実際にありました。)ので、注意点が必要です。リスケジュールとなると、その後の新規融資はかなり困難となるので、借り換えと条件変更(リスケ)は全く違うことを認識していなければなりません。

藤谷英明税理士事務所  http://fujitani.la.coocan.jp/

2011年6月 6日 (月)

ブラックリストの情報はいつまで残るのか?

 銀行やクレジット会社への返済が滞った場合、新たに借り入れをしたり、クレジットを利用することができなくなりますよね。これはブラックリストに情報が載ってしまったからとか言われていますが、実態はどのような状況なのでしょうか?

Ⅰ.信用情報機関へ登録・照会されます
 借入やリースをする場合には、申込者の同意を得た上で信用情報機関への照会や登録がされます。信用情報機関の一つ、株式会社日本信用情報機構(JICC)という機関があります。こちらに加盟しているのは日本全国の金融機関・信販会社・消費者金融会社・カード会社・保証会社・リース会社等になります。

Ⅱ.登録される情報とは
 信用情報機関へ登録される情報とは、貸付日、貸付金額、残高、完済日や異動参考情報等があります。このうち、異動参考情報に記載される事項がブラックリストといわれるものになります。

Ⅲ.異動参考情報に記載される事項(JICCのファイルDを参照)
  ① 延滞(元金や利息が入金予定日から3か月以上入金されなかったもの)
  ② 延滞解消(延滞状況が解消されたもの)
  ③ 債権回収(債権者が強制執行や支払督促等の法的手続きをとったもの)
  ④ 債務整理(債務者が債務に関する整理行為をとったもの)
  ⑤ 破産申立(債務者が裁判所へ自己破産を申し立てたもの)
  ⑥ 民事再生(債務者が裁判所に民事再生手続きを申し立てたもの)
  ⑦ カード強制解約(債務者の返済能力の欠如等を理由として、債権者が強制的にカード契約を解約したもの)
  ⑧ 他
 上記のように、延滞者や破産者等は信用情報機関に登録されるため、他の金融機関等はこの情報をもとに融資ができるかどうかを判断するのです。

Ⅳ.登録期間
 上記Ⅲの情報はどのくらいの間、登録されているのでしょうか?
  Ⅲ.①・・・延滞継続中の期間
  Ⅲ.②・・・延滞解消日から1年を超えない期間
  Ⅲ.③④⑤⑥⑦・・・発生日から5年を超えない期間
 この登録期間の定めにより、自己破産等をした場合には約5年間は新規の借入やリースをすることができないのです。

Ⅴ.自分の信用情報を確認できます
 銀行への融資を断られたり、カードを利用できない場合には、自分の情報がどのように登録されているかを確認してみたらいいと思います。これは本人からの申し出により、郵送や訪問により情報を開示することができるので、お勧めいたします。

ブログ雑学大王 http://fujitani.cocolog-nifty.com/zatsugakudaiou/
藤谷英明税理士事務所

2010年9月 2日 (木)

借入金の正しい返済順位(資金繰りが厳しい時の対応①)

 昨今の不景気などの影響により売上が減少している企業が多くなってきています。そのため、資金繰りが厳しくなり、借入金の返済が困難となるケースが今後多くなってくるのではないでしょうか?ここで注意すべきですが、「借りたお金は返す。」は基本ですが、その借りたお金の返済順序はどうされていますか?

1) 銀行返済は一番最後
 このように書くと金融機関の方から怒られそうですが、理由があります。返済順位は下記が正しいのです。
① 支払手形・・・手形の引き落としができなければ倒産となってしまう可能性が高くなるからです。
② 買掛金・・・取引先や仕入先の支払いが遅滞したり払えなければ、事業継続ができなくなるからです。
③ 親戚・知人からの借入金・・・支払いができなくなったり、連帯保証などで迷惑をかけてしまうと一番の支援者にそっぽを向かれてしまうことになります。親類縁者は一番の理解者でもあり、一番敵になりやすいのです。
④ 税金・社会保険・・・滞納額が多くなると、預金や売掛金の差押えも早い段階で行ってきます。この租税債務は民事再生法等の法的手続きをしてもカットができません。
    ※上記はカットできないものです。つまり払えなければ企業の存続に直結します。
⑤ 銀行借入金・・・銀行からの借入金返済は優先順位からして一番最後です。なぜならば、中小企業金融円滑化法により、元金返済額の減額などの条件変更の緩和がしやすくなったことや、サービサーを利用した債権カットの方法(ディスカウント・ペイオフ)もあるからです。

2) 現状は銀行借入金の返済が最優先
 現状は銀行からの借入金を返済するために税金や社会保険を滞納し、親戚等からの借入や高金利である消費者金融からの借入で銀行からの低利融資(2~4%)を返済しているのです。なぜこのようになるのかですが、一時的な資金繰り悪化と考え、その場しのぎをしてしまうからです。将来的には業況が回復すると考え、その良くなったときに銀行から融資をしてもらうために最優先で銀行に対して返済をしているのです。

3) ディスカウント・ペイオフを利用した債権カット方法
 返済が行き詰まった場合、民事再生法での債権を考えますが、この民事再生法を利用する場合には強力なスポンサーがいなければ、困難であるといえます。そのため、ディスカウント・ペイオフという手法を利用します。
 例えばA社が銀行より借入金があるとします。この借入金を返済するのに50年以上かかる状況となっており、銀行にとってA社は『不良債権』扱いになります。銀行は自行の健全性(自己資本比率・不良債権比率)を保つために、サービサー等の不良債権を買い取る専門の組織に、10の融資残を、1で売却します。サービサーは『買った金額よりも高い金額で回収して、利ザヤを稼ぐ』組織のため、A社が2を支払うことで1を儲けます。これにより、A社の10の借入金が2を支払うことで残余8を免除してくれるのです。

4) 銀行返済が一番最後となる理由がわかりましたか?
 上記の理由から銀行からの借入金は条件変更により減額することができますし、最後の手段でサービサーを利用した債務免除の可能性があるのです。これは銀行からの借入金しかできないのです。そのため、銀行返済は一番最後であるといえるのです。

2010年4月 6日 (火)

金融円滑化法の活用方法

    資金繰りに窮する前の対応

イ)緊急保証を受ける。 (信用保証協会100%保証)

8,000万円+別枠8,000万円まで。月商45倍まで借入可能

ロ)日本政策金融公庫の融資を受ける。

ハ)円滑化借換保証により、複数の借入をまとめて返済期間を長くする。

ニ)プロパー融資の借り換えをお願いする。

ホ)それでもだめならば返済猶予をお願いする。

    返済猶予をする前に借入をした後で返済猶予をする。

 返済猶予をしたことにより、その理由での新規融資拒否はだめだが、そのような企業は他の理由でも断ることができるため、簡単に返済猶予はしない。

    返済猶予をする場合、早めに相談を

   申し込みから決定まで1~3か月かかります。

   銀行が返済条件に応じるための会社の条件

イ)事業継続の意思があるか

ロ)銀行に対して情報公開してもらえるか

ハ)銀行への金利だけは支払えるか

イ~ハの条件に該当すれば3か月から1年の元本返済猶予に応じる

ニ)資金繰り改善に目途がある

ホ)計画策定している

その後ニ+ホができれば、6か月~2年若しくは3年の返済猶予に応じます。

    銀行のスタンスが変化しています

 金融庁が謝絶記録(融資を断った記録)を見ます。そのため、銀行は企業倒産の引き金を自分のところでは引きたくないため、返済条件の変更に応じます。 

    返済猶予の交渉をする場合の話し方。

「アドバイスをして頂けないでしょうか。」・・・・・最初から低姿勢で

「どうしてだめなのか理由を教えてください。」・・・返済猶予を断られた場合

静かな口調で話して下さい。感情的になると説明責任がなくなるため不利となります。

現在は金融庁が見ているため、返済猶予の相談があれば説明しなければならない。

    一時しのぎの返済猶予はダメ

 返済猶予を受けても改善していかないと返済条件を元に戻すことができないため。

    銀行の返済猶予の仕方

  1月    2月    3月    4月    5月    6

 50万円  50万円  50万円  50万円  50万円  50万円

  ↓     ↓     ↓     ↓    ↓     

   0円    0円    0円    0円    0円  300万円

途中の状況で銀行が延長か一括返済が選べるため。つまり改善の見込みが無ければ一括返済を銀行が選んでも金融庁に対して説明できるため。

2010年1月29日 (金)

中小企業金融円滑化法によるリスケジュールの対応について

 中小企業金融円滑化法が平成21年12月4日から施行されていますが、この法律はどのようなものなのでしょうか?

特徴① 中小企業が銀行からの借入金に対して返済条件の変更(リスケジュール)を申し込んだ場合、銀行はできる限り条件変更を行うように努めなければならなくなりました

特徴② 銀行は他の金融機関・政府系金融機関及び信用保証協会と連携して条件変更を行うように努めなければならなくなりました

 上記の特徴に共通していることは、「努めなければならない」という努力義務規定であるということです。しかしながら、金融機関は努力義務であるということで条件変更に対して消極的である場合には、金融庁からの指導があるので、やらざるを得ないというのが現状ではないでしょうか。 

 【金融検査マニュアルの改訂】

 条件変更等を行う場合に経営改善計画等がなくても、最低1年以内に計画等を策定することができる見込みがあれば、不良債権とはならなくなりました。そのため、改善計画を1年以内に提出することを条件として、先に条件変更等を受けることが可能となりました。  

 【条件変更により新規融資は困難になるのだろうか?】 

 金融庁のパンフレットによると、下記の問いとなっています。

Q4「貸付条件の変更等を受けたことを理由に、今後、新規融資を断られることがありませんか。 

A4「そのようなことはありません。個別の融資は各金融機関が借手の信用力等を踏まえて判断しますが、金融庁も、貸付条件の変更等の履歴があることのみを理由に新規融資を拒絶することが無いよう、金融機関に対する検査・監督で検証していきます。」

  皆さんは上記についてどのように思われますか?結論からすると新規融資は現状では難しいものと判断できます。なぜならば、金融庁は検査・監督で検証していくとのことですが、新規融資を断るかどうかの判断を各金融機関に委ねているのです。つまり、金融機関が貸付条件変更等の履歴だけでは融資の拒絶を判断しませんが、条件変更等をする企業は資金繰りが悪く、信用力が低下していると判断するのではないかと思われます。結果として企業の格付けを融資適格対象とすることが非常に難しくなるのです。

 ですが、この制度も利用の仕方では非常にメリットがあります。もし既に新規の借り入れができない企業であるならば、積極的にこの制度を利用して返し渋ることができます。例えば、年間500万円の返済をしている企業が条件変更の申し込みをして、年200万円の返済に変更できたならば、新たに年間300万円の借り入れができたのと同じ効果があるのです。そのため、返済のために借入をするといったいわゆる自転車操業に陥っている企業であるならば、この制度を利用して借入金の総額を減らしていくことが可能となるのです。  

【条件変更の申し込み方】

①  まずはご利用の金融機関にご相談ください。

②  金融機関に条件変更等の申し込みを断られた場合、借入をしている他の金融機関や信用保証協会に相談してみましょう。金融機関は他の金融機関等と連携して条件変更を行うように努めなければならないからです。

③  申込時に経営改善計画が無くても1年以内に提出することを条件として、先に貸し付け条件等の変更を受けることができます。

④  事業計画書の作成は当事務所にご相談ください。

2009年6月 3日 (水)

リスケジュールは最後の手段

 以前において、「金融検査マニュアル別冊」が改定されて、貸出条件の緩和(リスケジュール)をしても不良債権になりにくいという話をしましたが、かなり誤解が発生しているということが言われています。これは金融庁が中小企業者向けに作成したチラシにより、「経営改善の見込みがあれば、不良債権になりません。」という点を、不良債権とはならないから正常債権になるのではという認識が多く持たれたことによるそうです。

 以前にもお知らせいたしましたが、経営改善の見込みを判断するのは銀行であって、リスケジュールを受けるかどうかは銀行次第です。銀行が条件緩和を受けたくないのは、「条件緩和」イコール「不良債権」となるからです。そのため、経営改善がすすむかどうかは企業側が作成した経営改善計画の内容によります。

 条件緩和をして不良債権とならなかった割合というのが22~23%ぐらいといわれています。つまり7割以上が条件緩和をして不良債権として認定されてしまったのです。この数字からみると、条件緩和(リスケジュール)が最後の手段であることが理解できるのではないでしょうか。

 条件緩和をした場合、債権の分類上では「要注意先」か「要管理先」となり、新規融資は非常に困難となります。「正常先」となるわけではないのでご注意を!

2009年4月30日 (木)

返済条件緩和(リスケジュール)がしやすくなったけど・・・

 平成20年11月に金融検査マニュアル別冊が改訂されて、条件緩和(リスケジュール)をしても経営改善の見込みがあれば、不良債権とならなくなりました。この条件緩和をしやすくするために、次の点が改訂されました。

 ①条件緩和の期間を3年から5年(良好ならば10年)まで延長されました。

 ②条件緩和期間中に必要以上の利息を負担する必要がなくなりました。

 ③条件緩和のための事業計画書を作れなくても金融機関との打ち合わせで大丈夫となりました。

上記3点により、中小企業庁等のパンフレットではリスケジュールがしやすくなったと書かれてますが、実際はどうでしょうか?

 実は、条件緩和をすることにより経営改善を行い、一定期間後に元の返済条件に戻れるかどうかの実現可能性が重要なのです。この実現可能性が高い計画かどうかを判断するのは銀行なので、銀行によってはできると判断するところもあれば、そうでないと判断するところもあるのです。

 銀行の対応

この金融検査マニュアル別冊が改訂される以前の銀行ごとのリスケジュールに対する対応は一般的に次の傾向がありました。

都市銀行・・・・・・・・・・・・・門前払い(棒高跳びのバー)

日本政策金融公庫・・・・・門前払い(棒高跳びのバー)

地方銀行・信金・信組・・・他が対応すれば応対する(ハードル)

 改定前は陸上選手でしか飛び越えないような高さのハードルでした。これが、改定後には次のようになりました。

都市銀行・・・・・・・・・・・・・高跳びのバー

日本政策金融公庫・・・・・他が対応すれば応対する(ハードル)

地方銀行・信金・信組・・・他が対応すれば応対する(ハードル)

 日本政策金融公庫は国の政策銀行のため、今回の改定が金融庁によるもの(中小企業支援を反映したもの)のため、積極的に条件緩和するようです。

 地方銀行・信金・信組はリレーションシップバンキング(地域密着型金融機関)の考えのもとに動いている部分があるため、企業の存続が可能ならば条件緩和には応じてもらえやすいです。(ただ、銀行にもよります。どれだけ地元密着度が高いかがカギ)

 都市銀行(メガバンク)は、未だに大企業やお金持ちの方しか見ていないような気がします。ただ、以前のようにあからさまな対応はしないでしょうが。

 リスケジュールを成功させるためには

 前述しましたが、経営改善の見込みがあれば、条件緩和をしても不良債権とはならなくなりましたが、銀行ごとに対応が違うことは明らかであり、ましてリスケジュールのお願いを銀行の営業担当者にお願いして積極的に対応してもらえるかどうかは、あまり気乗りしないのではないでしょうか。計画がなくても条件緩和が可能とあっても、実際は難しいのではないでしょうか?

 やはり、リスケジュールを成功させるためには借入先のすべての銀行を納得させる事業計画書を作って持っていくのが、お願いする立場としては最低限のマナーだと思います。

 また事業計画書では貸したお金を返してもらえるかどうかが重要です。改善の見込みがない計画書を作成して提出しても、逆効果となるので注意が必要です。