12月10日に平成24年度の税制改正大綱が閣議決定されました。今後国会の可決を経て法律が成立されますが、来年度の税制がどのように変わるのかがわかります。
Ⅰ.個人所得税
①給与所得控除の上限の見直し(平成25年分以後の所得税から)
その年中の給与等の収入金額が1,500万円を超える場合の給与所得控除額については、 245万円が上限となります。
②退職所得課税の見直し(平成25年分以後の所得税から)
役員等で勤続年数が5年以下の者に対する退職金については、退職所得控除額を控除した残額の2分の1としない。
③認定長期優良住宅の新築をした場合の所得税額の特別控除については、税額控除の上限を 50万円(現行100万円)に引き下げたうえで、適用期限を2年延長します。
Ⅱ.贈与税
①住宅取得資金等の贈与税の非課税措置
直系尊属(祖父母や父母)から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、次の措置を講じます。
イ)省エネルギー性・耐震性を備えた良質な住宅家屋の場合
(a)平成24年中の贈与 1,500万円
(b)平成25年中の贈与 1,200万円
(c)平成26年中の贈与 1,000万円
ロ)上記(イ)以外の住宅家屋の場合
(a)平成24年中の贈与 1,000万円
(b)平成25年中の贈与 700万円
(c)平成26年中の贈与 500万円
Ⅲ.法人税
①延長
イ)中小企業投資促進税制の適用期限を2年延長
ロ)交際費の損金不算入制度及び中小法人に係る損金算入の特例の適用期限を2年延長
ハ)中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の適用期限を2年延長
平成23年度の税制改正大綱はねじれ国会と東日本大震災の影響により、ほとんどが先送りとなってしまったため、来年度税制改正についても国会での可決を踏まえたうえで判断する必要があります。
税理士法第33条の2に規定する書面添付とは何でしょうか?言葉としては聞きなれないかもしれませんが、実は決算の時点において当事務所の関与先皆様に署名捺印をお願いしているものになります。それではどのようなものかについてですが、次の書類となります。
① 税理士法第33条の2第1項に規定する添付書面(法人税・消費税)
② 基本約定書・・・・・お客様と税理士との間での宣言書
③ 完全性宣言書・・・・取引についての完全網羅性についての宣言書
④ 書類範囲証明書・・・巡回監査の際に監査した書類
⑤ 棚卸資産証明書・・・棚卸金額に間違いが無いがないことを証明する書類
⑥ 負債証明書・・・・・負債金額として計上した金額以外のもの(簿外負債)が無いことを証明する書類
上記の書類の内、①についてが、税理士法第33条の2に規定する書面添付となり、TKCではさらに②から⑥までを含めて書面添付としています。
1. 提出するメリット
この書類を税務署に提出することにより、次のメリットがあります。
① 税務署は税務調査に移行する前に、書面添付を提出している税理士に対して意見聴取を行うこととされています(現金調査を除く)。この意見聴取では、税理士に書面添付に記載されている事項についての確認をし、その確認で税務署が納得できれば調査の必要なしということで、調査省略通知が発行され、実地調査をすることなく終わることになるものです。
ここ数年この調査省略が増えてきているため、良好な書面添付を作成して提出することにより実地調査の煩わしさを避けることができるかもしれません。
② 書面添付作成企業は、経理処理が適切に行われており、決算書について信用できるものとして、銀行からの評価が高くなります。金融機関によっては、書面添付作成企業に対して借入金の金利を優遇するところもあるようで、今後このような対応が増えてくるものと思われます。
2. なぜ書面添付提出企業が評価されるのか?
実はこの書面添付に記載した事項に虚偽の記載があるときは税理士法違反として懲戒処分の対象とされるのです。そのため、書面添付を提出する企業として適当であるとの判断をした上で、作成及び提出をしているのです。つまり、書面添付を付けている企業は税理士が適切な経理処理を行っているということのお墨付きを付けていることと同じであり、その点を税務署や金融機関が評価しているのです。
3. 税務署では今後この書面添付を積極的に活用していくようです。
この書面添付が脚光を浴びたのは実は最近になってからなのです。書面添付の制度自体は昭和31年からありますが、意見聴取制度が平成13年の税制改正により創設されました。その後、平成21年に国税庁の事務運営指針が発表され、この書面添付制度及び意見聴取制度の整備が図られ、積極的に活用していく旨が掲載されました。実は現在の税務調査の実地調査率が法人は10年に一度、個人に至っては100年に一度と言われるくらいに下がっており、また国際会計等を含めて税務会計が複雑化したため、税務当局側にとってもこの制度により、良好な企業の実地調査を減らして、その余力をそれ以外の企業に向けることを可能とするため、渡りに船だったのではないかと思われます。
4. まだまだ提出企業は少ないのが現状です。
全国の法人の申告件数は平成20年には280万件ですが、そのうち書面添付割合は6.0%とまだまだ少ないのが現状です。しかしながら毎年増えており、税務当局側もこの割合を増やすために積極的に活動しているようです。
税務調査の現況(実調率)は、法人が4%で個人は1%となっており、年々減少しています。この数字を見る限りでは、法人は25年に1度、個人はなんと100年に一度に税務調査があるかないかという状況になっています。
「そんなことはないよ。うちは5年に1度若しくは7年に1度くらいで税務調査が来るよ。」というところはあると思います。その原因は業種(不正が多い業種や業況が良い業種)や前回の税務調査の結果等が起因していると思われます。以前のように事業をしていれば必ず税務調査があるという状況ではなく、現在では税務調査が来る方の可能性が少ないと考えられます。そこで、税務調査のポイントと急に来てもあわてないための対策について考えていきたいと思います。
① 突然現金調査に来た場合(無予告調査)
一般的には、書面添付(税理士法第33条の2に規定する書面で、当事務所では毎月監査を行っている企業様に対しては原則として作成している書類です。)を出している企業に対しては、まず税務調査に入る前に、関与税理士に対して連絡があります。
しかしながら事前通知なしで現金調査が行われることがあります。これを拒否できるかどうかについてですが、結論的には納税者には受忍義務があるため、税務調査を断れません。そのため、まずは税理士にご連絡下さい。そして、税理士立会いの下調査を始めるように伝えましょう。
② 税理士の関与度合について必ず聞かれます
税理士がどの程度関与しているかについて必ず聞かれます。毎月訪問しているか、それとも年1度だけなのかどうか等。関与程度が低い場合、かなりじっくりとみられる傾向にあります。
この関与度合いが高い場合で、しっかりとした書面添付を提出している企業の場合、最初に税理士に対しての意見聴取が行われ、そこで税務調査官が納得できれば実地調査をしない「調査省略」となるケースが増えてくることになるものと予想されます。
なぜならば、税務調査官の数が減少しているのに対して、国際課税等の複雑な案件が増えており、国税庁の方としても実地調査を減らしていきたいという思惑があるようです。そこで利用されるのが書面添付といわれる書類です。
この書類を当事務所が提出できるのも、毎月巡回監査ができることが条件であるため、今現在年1度や3か月に一度に書類を預かって申告書を作成しているお客様は、税務調査対策のため、毎月訪問に変更されることをお勧めいたします。
③ 見るポイント
税務調査で必ず見るポイントは次となっています。
・給与の支給状況、架空従業員の有無・・・タイムカード等で調べます。
・売上のもれ・・・・領収書、請求書、納品書、相手方の反面調査。
・経費の過大計上・・・領収書、請求書、相手方の反面調査。
・個人的な支出(特に交際費)が計上されていないかどうか。
・貸アパート等の賃貸状況・・・住民票を取得して入居状況を調べることもあります。
④ 調査に入るタイミング
大きく売上高や利益が増減している企業は調査の対象になる可能性があります。また、役員の退職や不動産の購入など特別な事由がある場合も同様です。
税務調査と聞くと、どのようなことを調べられるのか等の不安を持たれることと思います。今回は税務調査における現金調査についてお話させて頂きます。
① 現金商売では現金調査が付き物です。絶対ではありませんが、現金調査の可能性はかなり高くなっています。これはなぜでしょう?
現金売上が合っているかどうかを調べるためにはレジペーパーを見ることになります。しかしながら、レジペーパーだけでは、売上先が不明若しくは不特定多数のため、実際に売り上げたのかどうかを相手方に聞く(いわゆる反面調査)ことができません。そこで現金の残高を調べることにより、売上の漏れをさかのぼって調べることができるのです。
これに対して、掛販売では請求書や領収書等の書類を基に取引先を調査して、金額が合っているかを突き合わせることを実施します。
② 現金が合わなかった場合はどうなるのでしょうか?
現金が元帳残高と実際の残高が合わなかった場合、その不一致原因が売上の計上漏れにあるのか、その他にあるのかをじっくり調べます。売上の計上漏れが原因と判断された場合、修正申告では重加算税の対象となります。
重加算税 = 修正申告による納付すべき税額 × 35%
重加算税とは事実の全部又は一部を隠蔽し若しくは仮装した場合に対する罰則のような税金です。売上の計上漏れは、故意や過失を問わず悪質なものであると税務当局は判断する傾向にあります。
③ 重加算税に対する念書に簡単にサインしてはいけません。
最近の法人税の調査に立会いすると、些細な計算ミスや計上時期の間違いを捉えて経営者から「-----この誤りについて、重加算税を賦課されても異議ありません。」といった簡単な文言の念書にサインさせようとする調査官が多くなった感じがします。この念書に簡単にサインをしてはいけません。ここでサインをしてしまった場合、自己の非を認めることとなり、以後その件についてひっくり返すことができなくなるからです。
④ 納得できなければ、更正の決定にしてもらいましょう。
明らかな間違いはだめですが、見解の相違の場合、修正申告に簡単に応じてはいけません。
修正申告 = 自己の間違いを認め、自ら税の間違いを正すこと
更正の決定 = 税務署が間違いを指摘して正しい税(税務署が考える)に直すこと
上記の修正申告と更正の決定は同じようで実は違います。修正申告書を一度出すと、後で当該事項について修正することはできません。それに対して、更正の決定では、不服ならば不服申し立てをすることができます。実は税務署の担当官はこれを嫌がります。なぜならば、更正の決定をするということは、納税者が指摘事項について非を認めていないということであり、不服申し立てをされる可能性があるのです。これをされた担当官は指導能力について疑問視されるかもしれないからです。
⑤ 税務調査官も人の子です
税務調査官の指摘事項は絶対ではありません。法律的に間違いがある指摘をしている調査官に何度か遭遇したことがあります。理論武装すれば怖くありませんので、税金のプロである税理士にお任せください。
インターネットバンキングの契約をしていない場合、納付書を銀行等の窓口に持参して納付しなければならず、面倒であるといった方に朗報です。平成21年9月から国税の「ダイレクト納付」が始まりました。
【ダイレクト納付とは?】
事前に税務署に届出をしておけば、e-Taxを利用して電子申告等の送信をした後に、届出をした預貯金口座から、ワンクリックで即時または期日(納付期限まで)を指定して納付することができる新たな納付手段です。
【ダイレクト納付のメリット】
①税務署や金融機関に出向くことなく、自宅やオフィスから納付が可能です。
②納付手続きが簡単です。(電子申告等の送信後、ワンクリックで納付手続きが完了します。)
③インターネットバンキングの契約が不要です。
④即時または期日(納付期限までの間)を指定して納付することが可能です。
⑤税理士が納税者に代わって納付手続きを行うことができます。
【利用可能税目】
①源泉所得税
②法人税
③消費税及び地方消費税
④申告所得税
⑤酒税・印紙税
【利用可能金融機関】
現在地元に支店がある金融機関で利用可能なもの
みずほ銀行・三菱東京UFJ銀行・千葉銀行・千葉興業銀行
平成22年1月以降利用可能なもの
ゆうちょ銀行
【利用を希望する場合】
・e-TAX(電子申告)の利用開始のための手続きが終了されている方がご利用できます。
・ダイレクト納付を利用するためには、ダイレクト納付利用届出書を提出しなければなりません。
・ダイレクト納付利用届出書を提出してから利用可能となるまで、1か月程度かかります。
・ダイレクト納付を行う際には、預貯金口座の残高を確認してください。
このダイレクト納付を利用すれば、納付書を銀行等の窓口に持っていかずに納付ができるため、時間と手間を短縮することができます。インターネットバンキングは利用していないが、国税の納付も簡単に行いたい方は、ご相談ください。
また、取扱金融機関も今後増えてくる予定となっていますので、利用しやすい制度となってきます。
不明点は国税庁のホームページをご覧ください。
住宅を購入された場合、土地・建物の登録免許税や不動産取得税が発生しますが、これは購入したときの1回限りの税金です。それに対して、固定資産税(都市計画税含む)は購入翌年以降毎年発生するため、固定資産税の納付に悩まされている方は結構多いのではないでしょうか?実はこの固定資産税が盲点となっていて、金融機関からの返済だけでなく固定資産税の納付もきつい!とかならないように、固定資産税について考えていきましょう。
① 固定資産税の基本
固定資産税の納税義務者は1月1日現在における所有者となります。つまり年の途中に購入された方は、翌年から納税義務が発生し、一般的には毎年4、7、12、2月の年4回で納付します。
固定資産評価額は3年間据え置き、3年ごとに評価が見直されます。この評価額は固定資産評価証明書を参考とするしかありません。しかしながら、購入時における土地の固定資産評価額は時価の5割6分程度、建物は建築費の5割程度となります。
②固定資産税の計算方法
固定資産税 ・・・ 固定資産評価額 × 1.4%
都市計画税 ・・・ 固定資産評価額 × 0.3%
※ただし、次の減額措置があります。
A)住宅用地(土地)について
住宅用地の面積 |
固定資産税の課税標準 |
都市計画税の課税標準 |
住宅1戸につき200㎡まで |
評価額×1/6 |
評価額×1/3 |
住宅1戸につき200㎡超 住宅の床面積の10倍まで |
評価額×1/3 |
評価額×2/3 |
上記以外 |
特例なし |
特例なし |
B)新築住宅(建物)について(平成22年3月31日までの新築の場合)
120㎡まで3年間、固定資産税額が2分の1に減額されます。(マンションは5年間)
③計算例(あくまでも参考です。実際の金額とは異なることも有ります。)
土地(198㎡)1,000万円・木造家屋(延床面積118㎡)2,000万円で購入。
土地評価額560万円(評価変更無しと仮定) 初年度建物評価額1,000万円
|
課税初年度 |
3年度 |
4年度
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10年度 |
15年度 |
20年度 | |
建物 |
固定資産税 |
70,000円 |
70,000円 |
91,900円 |
67,200円 |
48,000円 |
27,400円 |
都市計画税 |
30,000円 |
30,000円 |
19,600円 |
14,400円 |
10,200円 |
5,800円 | |
土地 |
固定資産税 |
13,000円 |
13,000円 |
13,000円 |
13,000円 |
13,000円 |
13,000円 |
都市計画税 |
5,500円 |
5,500円 |
5,500円 |
5,500円 |
5,500円 |
5,500円 | |
合計 |
118,500円 |
118,500円 |
130,000円
|
100,100円 |
76,700円 |
51,700円 |
※経年減点補正率は再建築費評点数が47,000点~75,000点を参照(建物のグレードによって再建築費評点数が違います。)今回は20年目に残存価額20%となるものとして計算しています。
購入後4年度目が建物の減額措置がなくなるため、納付額が増加するので注意が必要です。