相続対策でアパートを建てる方は結構多いです。なぜならば、持っている土地にアパートを建てることにより、土地が貸家建付地として評価額が下がり、建物も減価償却していくものなので、持ち続けていくことで評価額が下がります。
固定資産税も1戸当たり200㎡以下の場合、小規模住宅用地として課税標準額が6分の1(都市計画税3分の1)となります。つまり6室のアパートならば、200㎡×6室=1,200㎡までがこの規定の適用を受けるのです。
そのため、相続税と固定資産税の軽減だけを考えて安易にアパートを建てようとしないでください。じっくり考えてアパートを建てることをおすすめします。なぜならば、相続税や固定資産税対策で最も最良の方法がアパートを建てることであることは間違いが無いからです。
もしアパートを建てることを考えている方は次の点に注意してください。
①借入金の返済計画は建物の耐用年数の範囲内で
木造22年、軽量鉄骨27年が耐用年数です。物理的にはこれ以上利用できますが、建物としての魅力がその耐用年数の範囲内と考えてください。例えば老朽化したアパートと新築のアパートどちらに住みたいですか?
②築10年後は必ず入居率が下がります。
築10年以内はよほど不人気地区でない限り、入居率が8割以下に下がることは無いと思います。しかしながら、10年を超えてしまうと、途端に入居率が下がります。入居率の減少を回避するために家賃を下げることになるはずです。ですから、営業の方が作ってきたアパート経営計画書の10年以降を確認してください。一般的には入居率100%で造っている可能性が高いです。築10年後に入居率100%はありえないです。
③部屋数と駐車場の数は一致していますか?
これもよくあるのですが、部屋の数に比べて駐車場の数が少ない物件があります。これが都会での話ならば問題が無いのですが、地方では一人1台でしょう。つまり車がないと地方では生活できないのです。それなのに、部屋数より駐車場の数が少ないとどうなるでしょうか?結論は近隣に違法駐車が横行し、近所迷惑となるのです。これは営業の人の給料が1室に対しての歩合となっている場合にこのような現象が生じます。つまり、営業の人から見れば部屋数が多い方が自分の歩合が多くなるから、無理して部屋数を多くとる間取りにします。結果として駐車スペースが削られるのです。営業の人からすれば、近隣からのクレームが出ても後のことと考えているのでしょうか?
④銀行は入居率80%で返済できるかを見ます。
当然ですが、入居率100%を20年から30年の間達成することは現実的ではありません。入居率が下がっても家賃が下がったとしてもどちらの場合でも借入金の返済が出来るかどうかを見ます。できないと判断された場合融資は受けることが出来ないでしょう。
⑤1室当たりの投資額と収益額で回収できるかを判断してください。
総投資額で判断すると分からなくなってしまうため、1室当たりの投資額(本体+外溝工事)÷1室当たりの家賃収入額(実際の手取額)で回収期間が求められます。
⑥一定期間一括借上げ等の家賃保証制度にご注意
この制度は当初に決めた一定期間ずっと同じ家賃を保証してもらえるわけではありません。一般的には最初の10年間に提示した保証金額が10年後の再契約時に見直されます。この際に「その時代の相場で決めます。」といった文言が入るはずです。10年後には経年劣化により入居率が悪化している可能性があります。家賃だって新築時のままというわけには行かないでしょう。ですから必ず保証家賃を下げてくるはずです。
そのため、一括借上げをしてもらっているから入ってくる家賃が安定するという間違いが起きるのです。確かに不安定ではなくなりますが、低い収入で安定するかもしれません。
⑦募集家賃と収受家賃との差が大きい家賃保証制度
家賃保証制度は毎月の安定的な家賃収入を保証する代わりに、管理費以外に保証料相当額を引かれているケースがあります。そのため、借主への募集家賃と実際に大家さんがもらえる家賃とに大きく差額が出ることになるのです。
築10年まではよほどのアパートで無い限り、入居率が平均8~9割を下回ることは少ないと思われます。そのため、この期間を家賃保証により手取り収入を少なくするのはデメリットが多いのです。問題は築10年以後なのですが、さらに低い家賃保証額となり、果たして一括借り上げによる家賃保証制度を利用する方が良かったのか悪かったのかはケースバイケースでしょう。
⑧一括借り上げに頼らない魅力あるアパートを造ることをおすすめします。
25年のローンでアパートを建てた場合、最低限耐用年数以内で返済が出来る計画でないとアパートを建ててはだめです。築10年が分水嶺のため、15年くらいで投資額を回収できるくらいの計画書でなければ22年(木造)で返済することは出来ません。
一括借り上げによる家賃保証制度を利用した場合、投資額の回収期間を20年くらいの目一杯にしていることがありますが、これだと、25年くらいでなんとか投資額を回収できることになるのではないでしょうか?
つまり入居率が80%になったときにどうなるかを考えると家賃保証制度を利用してもしなくても、収入が下がると考えて返済を考えた方がいいと思います。
一括借り上げの否定的な見方ばかりを話しましたが、安定的に回収できるならば一括借り上げによる家賃保証制度を利用するのも悪くありません。しかしながら、どのような制度を利用するにせよ、次の点を考慮した魅力的なアパートを建てられたならば、入居率が悪くならずに、早期の投下資本の回収が可能となるのではないでしょうか?
ア)ターゲットを間違わない
・・・単身者ならワンルーム
結婚後しばらく入居してもらうなら1LDK・2DK
子供がいるファミリー層なら3DK・2LDK
イ)回転率と入居期間
・・・ワンルームはとにかく回転期間重視。
長期に利用してもらい空室期間を少なくするならファミリー層
若しくはその予備軍を狙いましょう
ロ)駐車場が少ないと地方では不利
・・・車は1人に1台と考えると、近くに駐車場がないとファミリー層は難しいです。まして、部屋数と駐車台数の数があっていないなんて論外。
ハ)長く建物を持たせるなら木造より軽量鉄骨がおすすめです
・・・耐用年数が木造(22年)に比べて27年と5年も違います。